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【2025/08/27 00:32 】 |
トジラレタカゴデ

私は鳥籠の中。
鉄で作られた鳥籠。
冷たくて硬い鳥籠。
止まり木しかない鳥籠。
覆いの掛けられた鳥籠。
何も見えなくて。
どこにもいけなくて。
自分の声だけが聞こえる。
誰か、とないてみる。
いるならここから出して、と。
答える声など無い。
広げられぬ翼は背に重く。
広げようという意志さえ私には無い。
かつては草原を駆け巡る風に乗って飛び回ったというのに。
気付いた時はこうだった。
私は日に日に影になっていく。
きっとそのうちこの籠の闇に溶けてしまうのだろう。
私は忘れられた鳥。
飛ぶことを忘れた鳥。
誰かから愛されることを忘れた鳥。
闇以外の世界を失った鳥。

ある日覆いは取り払われた。
眩しい世界。
光の刺激が私の目を射る。
上には真っ青な空。
下には馴れ親しんだ草原。
私の世界はこんなにも近くにあった。
それなのに。
鳥籠は相変わらずの冷たさで私を阻んだ。
大空には鳥が舞う。
声を掛ける。
返事など無い。
だって私は忘れられた鳥。
名前すら持たぬただの鳥。
もう一度触れたい。
あの大空に舞い上がる幸福が欲しい。
でも誰も私に触れない。
忘れてしまっているから。
私は影。
光に当たれば消えてしまうのかもしれない。
世界は手の届く場所にあった。
でも私には届かない。
いっそ知らなければ。
私は苦しまなかったかもしれない。
覆いは外れるべきでなかったのかもしれない。
見えるのに触れられない。
それは見えないより辛いかもしれない。
それでも私は、このまばゆく美しい世界から目を逸らせないでいる。
胸の痛みは消えないけど。
それでも見ていられる。
感じていられる。
それは幸せなことなのだと知っていたから。
覆いが教えてくれたから。

それでも私はなく。
誰かここから出して、と。
誰か覆いを戻して、と。
私が溶けて消えるまでに。
私に与えられるのは光か、闇か。
冷たい鳥籠は黙したまま。
私は忘れられた鳥。
飛ぶことを忘れた鳥。
誰かから愛されることを忘れた鳥。
光と闇の間に縛り付けられた、嘆きの鳥。

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【2011/02/28 20:19 】 | 未選択 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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