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メロウ
そういえばあの時の女は
随分とビールを飲んだ
げらげらげらげら
大口を開けて唾を飛ばして笑った
そして終いには俺の肩に猿みたくぶら下がって
どうにかこうにか家まで帰った
トイレで散々吐き散らした後でベッドに倒れ込み
眠りに落ちる間際に
やさしいねと言った
その時のあんたは美しかった

そういえばあの時の女は
顔合わせるなりペシミストだと主張した
どうせ世界は終わるからと言った
あたしのことなら好きにしてとも言った
べらべらとよく喋った
回転寿司ばりに「どうせ」を並べ立てて
うざったいくらいに自己憐憫を繰り返した後で
出会えてよかったと言った
その時のあんたは美しかった

どんな女も
何かの拍子に美しかった
泥まみれだろうが酔っ払ってようが暴れようが死にたがろうが
何かの拍子には皆美しかった
俺を愛したその一瞬だけは確かに
どいつもこいつも腹が立つほど
美しかった

そういう女を俺は愛した

目の前のお前はこの文を読んでいる
読み終えるとすぐに散々ケチを付けることだろう
俺のこだわりまで踏みにじるようなことさえ
お前は口走る
或いは何も言わないだろう
あらゆる文字列の中で一番無難な感想でさえ
お前は口にしない
実のところ
俺はお前のことなんて微塵も知りはしない

ただ
読もうと思った瞬間のお前だけは
何より美しいと知っている

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【2017/07/25 23:44 】 | 未選択 | 有り難いご意見(0)
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