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帰り道。
貴方と私は道を違え、背を向けて歩み去ります。 いつも、貴方の大きな背中が遠ざかるのを見送ります。 最後に小さく小さくなった貴方の後ろ姿に、呟きます。 死んでしまえばいいのに。 それから、私は歩きはじめるのです。 私自身への自戒として、それを習慣としていました。 死んでしまえば私は貴方の前で泣けるのだから。 最早堪える必要などはどこにも無いのだから。 何故でしょう。 最近、その習慣は崩れつつあるのです。 殺してやれたらいいのに。 そう呟くようになりました。 えぇ、私は今とても貴方を殺したい。 刃物でも毒でも紐でも手でもなんだって構わない。 貴方を殺したい。 そうすれば貴方をあらゆる苦しみから護れるのだから。 貴方を誰にも渡さずにいられるのだから。 愛する人を誰にも触れさせることなく己の手で屠れるというのは、最高の幸せだと思うのです。 勿論貴方を失いたくなどない。 でも貴方はきっと私の思い通りになどなりはしない。 危険に飛び込むこと、傷を負うこともある。 私はそれを止めることなど出来ないのです。 それは貴方の人間としての人生を奪い去ることになる。 そこまでして生きるのは死よりなお悪いでしょう。 そう、殺してしまえば貴方に害を為すものなどありはしないのです。 殺す私はきっと心に大きな大きな傷を負う。 けれどその痛みさえ、私は愛しく思えるのです。 貴方が残した、たった一つ私に残したもの。 私が死ぬまで永遠に苛み続ける、出血の止まらない傷。 それがある限り、私は貴方を忘れずにいられる。 死ぬまで貴方を愛しつづけられるのです。 これ程に幸せなことを私は思いつきません。 歪んだ幸せだとしても。 私には貴方以外の幸せが分からないのです。 愛しています、他の誰よりずっと。 気が狂いそうに愛しています。 殺してしまいそうなくらいに愛しています。 だから、私を殺してください。 私は私自身が怖くて仕方ないのです。 貴方を殺さぬうちに、私を殺してください。 でも殺したい。 殺してください。 殺したい。 殺してください。 愛しています。 あぁ、歪んでいる。 私の中が歯止めの掛からぬ程に歪んでいく。 歪んで歪んで歪んで。 私が歪む。貴方が歪む。世界が歪む。 止まらない。止まれない。 貴方が遠ざかる。 背中がどんどん小さくなる。 行かないで。 逃げて。 手を伸ばす。 伸ばしたその手が――嘲笑うかのように――歪む。 PR |
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