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路地裏の水溜まりに指を浸した 「私は弱い」 呟いた声は輪郭を持って 汚穢を弾いた あまりにも明確な音 決して取って付けたものではなく 結局のところ私は 大して弱いわけでもない 残照を眺めるような そんな気持ちで私を俯瞰する もう今にも崩れ落ちてしまいそうだと 訴える私を傍観する 積み木細工の家は 住む人も無いほどの分厚い壁を隠し その機能を失っていくことに 気付かない 翼が欲しいと 太陽に手を伸ばした日もあったかもしれない だけど結局それは 自分を上手に叩きつけてやるための 高度が欲しかった訳で 中途半端な強度 中途半端な暗がり 纏った衣はどれも足りなかった 私の輪郭はここにあった 探すまでもないそれを どうにか捨ててしまいたくて この指が水の中に腐り落ちるのを ただ待ってみるのも良いかもしれない と思った ガラス越しの薔薇の花が 早く枯れてはくれぬものかと 思う度ガラスは私に染まったけれど 結局薔薇は美しい 手を伸ばしてそれを散らせるだけの狂気を 私は持ち得ない 針は常に十二時 なんにも触れないこの生き物は つまらない 叩きつける言葉の鈍器 目標はこの私の心臓 力任せの衝撃は 鋼鉄の肋骨に跳ね返されて死んでいく その言葉は脆弱 だけど綻びから鈍器を産み落とした その唇は冷えきった鋼鉄 恐怖に震える拍動を伝えるのは どこまでも頑健な私の声 鎧などありはしない この体はそれを要しないから 破り捨てた紙屑と張り合える程度の衣を 適当に絡ませておけば良い 結局この身は 大して弱いわけでもないのだから 四方に放つ言葉の弾丸 目標は私を取り巻く世界の心臓 無尽蔵の衝撃は 肉を切り裂き骨を打ち砕いて死んでいく その言葉は凶器 だけど綻んだ鎮魂歌を口ずさむ その唇は冷えきった狂気 背徳に震えるこの拍動を伝えるのは どこまでも頑健な私の狂喜 他人から溢れだす苦鳴を掬い ありもしない自分の空白に塗り固めて 私はどうにか弾倉を満たす ありもしない懊悩を憎悪に変えて 私はどうにか撃鉄を起こす 針は常に零時 なんにも触れないこの生き物は つまらない ガラス越しに息づく人類が 早く絶えてはくれぬものかと 思う度私はガラスを染めたけれど 結局人類は美しい 私は愚かで美しい 手を伸ばしてそれを砕ききるだけの狂気を 自らを逸脱させる異常性を 私は持ち得ない 中途半端な自己主張 中途半端な自己嫌悪 纏った衣はどれも「人」だった 私の輪郭は紛れもなく「人」だった 私はただの人だった 見るまでもないその事実を どうにか殺してしまいたくて この心が絶望の中に腐り落ちるのを この私が人でないものに成り果てるのを ただ待ってみるのも良いかもしれない と思った 光が欲しいと 太陽に手を翳した日もあったかもしれない だけど結局それは 自分を上手に消し埋めてやるための 闇が欲しかった訳で 私の内に巣食った闇を 生き駆けるための息も出来ないほど深く 助けを呼ぶための声も届かないほど濃く この中途半端な私を どこか遠くへ消し飛ばしてしまうほど強く 完成させるための僅かな光が 欲しかった訳で 満月を眺めるような そんな気持ちで私を客観視する もう今にも地に落ちて 欠片も残さず砕けてしまいそうだと 訴える私を諦観する 積み木細工の鉄仮面は 怪しむ人も無いほどの分厚い笑顔を透かし その機能を失っていくことに 気付かない 内側から少しずつ朽ちていくことに 気付けない 結局私は 路地裏の水溜まりに指を浸した 「私は強い」 呟いた声は威厳を持って 汚穢を弾いた あまりにも明確な輪郭 決して私が描いたものではなく 結局のところ私は 大して弱いわけでもない 大して強いわけでもない 全ては私が思い描いた中途半端な自己暗示でした おしまい PR |
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